2024.01.12
議員になってわかった、請願を通すためにできること|カークランド 陽子
皆さん、請願や陳情ってご存知でしょうか?私はお恥ずかしながら議員になるまでは全く知りませんでした。
議員の議会活動の上に問題となる事例を全国から集め、これを細かく整理し、議員の立場に立ってその疑問に答えた「議員必携」と言う書物があります。この議員必携によると、請願とは、憲法第16条に規定された国民の権利として、公の機関に対して要望を述べる行為、と言うことです。地方議会に対する請願は、請願の趣旨、提出年月日、請願者の住所及び使命を記載し押印した文書で行い、議員の紹介が必要となります。提出された請願は議会において審査され、採択・不採択の決定がなされた後、結果が提出者に通知されます。
一方陳情は、議員の紹介なしで提出されるものですが、地方自治法には議会に陳情を受理する権限を与えた直接の規定はないが、陳情も住民の要望の表明であるため、会議規則においては、所定の様式を整えていれば受理をして、その取り扱いは議長の判断に委ねる、と書いてあります。要は、請願も陳情も、市町村民が市町村に対する要望を公に伝える手段ということです。
私も令和3年11月に議員になってからすでに4回ほど請願の紹介議員になり、4つの全ての請願において「採択」という結果となりました。
4つの請願は以下の通りです。
1)令和4年12月 学校における子供の健全な育成を求める請願書(コロナ渦における給食時のマスクの緩和や運動時のマスク非着用の徹底などを求める請願)
2)令和5年6月(仮称)新城・設楽風力発電事業の説明会の開催を求める請願
3)令和5年12月(仮称)新城・設楽風力発電事業に関する住民意見と事業者への請願書
4)令和5年12月 学校給食への有機・無化学肥料・無農薬米の導入を求める請願
こう見ると、請願が採択されるって簡単なことなの?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、少なくとも私の所属する新城市議会においては、これまではそう簡単なことではなかったようです。そしてそれ以前にそもそも「請願を提出する市民」もほとんどいないというのも現実です。理由はおそらく以下が考えられるのではないかと思います。
1、そもそも市政に興味がある市民が多くない。
2、市政に不満や要望があっても、請願や陳情の制度を知らない。
3、請願や陳情を出すには、氏名と住所を公にする必要があるので、個人にはハードルが高い。
それらをクリアし請願を提出することになれば当然、採択して欲しいですよね?請願が採択されればそれは公に市議会が認めたということになり、議会に対する要望であれ市に対する要望であれ、一定の効力を持つことになります。なので、仮に請願者からみて採択されて当然だと思われるような請願でも、議員は簡単には採択はしてくれません。それを採択してもらえるよう動くのも、紹介議員の役割です。
では、採択してもらうために議員ができることとはどんなことでしょうか?
まずは、紹介議員が仲の良い議員ばかりだと、別の政党や会派の議員さんから賛同してもらいにくいので、できればそれ以外の議員さんに連名になってもらえると良いです。私の場合は毎回自民党の議員さんの中から趣旨に賛同してくれそうな議員さんにお願いするよう、努めています。
次に、その議員さんと内容を確認し、細かな部分でもなるべく相手の納得いくような形にできるよう、趣旨が変わらない程度に妥協し、お互いが納得できる落とし所を探します。
最後に、紹介議員以外の議員さんにそれとなく採択してくれそうか、探ってみて、なるべく採択してもらえそうな空気を作ります。その空気を事前に作る1つの手段として、一般質問で取り上げおくのも良いでしょう。
そして、私が考える「請願を採択してもらうために、議員がすべきこと」で一番大事なことは、常日頃他の議員さんとの良い関係を構築しておく、です。
議員の中には考えの近い人もいれば、違う部分が多い人もいるし、同じ人でも考えが同じ時もあれば違う時もあります。相手も人間です。意見が違う時に喧嘩腰やこちらが正しいという威圧的な態度で接していると、嫌われてしまうこともあるでしょう。そして、嫌いな相手が例え正当なことを言ったとしても、賛成してくれなくなってしまうかもしれません。
「おかしいことはおかしいと言う」と言うのが参政党のスタンスですが、表現の仕方には工夫をしないと前進できなくなってしまう、むしろ後退してしまう場合もあるのではないでしょうか。
目指すゴールがどこなのかを見失うことなく「急がば回れ」の精神で、一歩でも前進できるよう、今後も頑張りたいと思います。皆さんも市や議会に訴えたいことがあったら、この制度、利用してみてはいかがでしょうか。
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カークランド 陽子
Yoko Kirkland
所属議会
新城市議会議員(愛知県)
経歴
昭和49年生まれ、千葉県出身。日本大学卒業後、タイとイギリスへ語学留学。その後渡英。2015年、日本のために何か役に立ちたいと、愛知県新城市へ移住。2021年の新城市議会議員選挙にてトップ当選。
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