2024.04.23
我が国の科学技術関連政策における国際関係と安全保障への影響に関する質問主意書
令和6年4月23日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
『我が国の科学技術関連政策における国際関係と安全保障への影響に関する質問主意書』
これまで、累次の「公的機関の職員の国籍に関する質問主意書」を提出し、答弁書の送付を受けた。この過程で、国立研究開発法人産業技術総合研究所、国立研究開発法人科学技術振興機構、国立研究開発法人物質・材料研究機構、国立研究開発法人理化学研究所の四法人(以下「本件四法人」という。)における外国籍職員のうち、特に中国籍の職員が全体の約三割から半数を占め、他の国籍の職員に比べて顕著に多いことが判明した。他国籍の職員との比較で均衡が取れていない状況である。
しかし、答弁によると、「本件四法人」では、外国籍職員の採用に関する組織全体を横断する指針が存在せず、特に中国籍職員が多い現状であっても、そのような指針を策定する予定がないという。政府の危機意識や問題意識の欠如が見受けられる。中国籍職員が中国の国家情報法や国防動員法に基づき、中国政府の命令に従う義務が生じる可能性については、これらの法律が「他国の法律」であるため、質問の意図が不明瞭であるとして、具体的な答弁はされなかったが、これは本質的な懸念と課題から目を逸らしていると言わざるを得ない。このように、中国籍職員の採用が突出している現状に鑑み、我が国の科学技術関連予算により実施される事業や、本件四法人を含む科学技術関連組織の運営においても、職員採用に限らず国際的な視野に立った検証が必要であると考える。
一方、日本学術振興会(以下「JSPS」という。)は、文部科学省の下で設立された独立行政法人であり、学術研究の助成、研究者の育成、学術交流の促進などを通じて日本の学術振興の核となっている。また、科学技術振興機構(以下「JST」という。)は、二〇〇六年に「中国総合研究センター」を設置し、特定の国や地域を対象にした唯一の組織として長期にわたり活動してきた。二〇二一年には、「アジア・太平洋総合研究センター」として対象範囲を広げた。日本学術会議が我が国の防衛技術の開発研究への参加や協力を国内研究者に忌避するよう促す一方で、中国の軍事技術開発に関与するとされる「国防七校」と我が国の大学機関との共同研究等の提携を不問にしている矛盾について、質問主意書(第二百十一回国会質問第八一号)にて指摘した。中国政府は、民間の最先端技術を軍事力強化につなげる「軍民融合」を進めており、国防七校はその中核とされる。我が国の安全保障及び科学技術の保護の観点から、軍事転用が可能な機微技術の海外流出を防ぐためにも、国防七校との関わりには慎重な対応が必要であるにも関わらず、国費で運営されている日本学術会議はそうした対応と真逆の姿勢をとっている。さらに、中国が推進する海外人材の招致計画、いわゆる「千人計画」についても、技術流出等の懸念から問題視されており、同様に慎重な対応が求められる。
なお、既に質問主意書(第二百十二回国会質問第三一号)にて指摘したように、令和五年六月に、国立研究開発法人産業技術総合研究所の研究データを中国企業に漏らしたとして、国防七校の教授を兼務していた中国籍研究員が逮捕されたという不祥事が発生している。
以上を踏まえ、以下質問する。
一
国立研究開発法人における外国籍職員の採用に関して、特に中国籍の職員の高い採用傾向を政府はどのように評価しているか。また、外国籍職員の採用に関して組織横断的な指針を設ける予定はあるか。
二
本件四法人及びJSPSそれぞれの事業費全体に占める国際事業(実施及び助成を含む)の割合、及び相手国別の事業内容と予算額、国際事業全体に占める割合について詳細を示されたい。また、在籍する中国籍職員が中国を対象とする事業の実施に際して果たす役割を明らかにされたい。
三
前記国際事業の中で、中国の「国防七校」と関わる事業の内容、予算額について具体的に示されたい。これらの事業が我が国の安全保障に与える影響についての評価があれば、その内容も併せて示されたい。
四
本件四法人及びJSPSにおいて、中国の「千人計画」に関連する事業、及び千人計画参加者が関わる事業の内容と予算額を示されたい。また、これらの事業が技術流出等のリスクをどのように管理しているかについて、説明されたい。
五
JSTに設立された「アジア・太平洋総合研究センター(旧称:中国総合研究センター)」は、特定の国や地域を対象として唯一設立され、長期にわたり活動してきた。このセンターの設立背景及び活動の理由について説明されたい。
また、同センターは、「中国文献データベース」、「サイエンスポータル・チャイナ」、「日本の中国関連団体情報」、「中国・アジア研究論文データベース」、「中国政府による日本の若手科学技術関係者の招へいプログラム」といった、中国を中心とする多数の事業を実施している。これらの事業について、特に「国防七校」、「千人計画」との人的構成や研究内容について、関係性があるのではないか。同センターにおける中国籍職員の在籍状況と活動状況と併せて、具体的に明らかにされたい。
右質問する。