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2024.06.20

我が国の科学技術関連政策における国際関係と安全保障への影響に関する再質問主意書

令和6年6月20日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
 
『我が国の科学技術関連政策における国際関係と安全保障への影響に関する再質問主意書』
 

 我が国の科学技術関連政策における国際関係と安全保障への影響に関する質問主意書(第二百十三回国会質問第一一七号、以下「本件質問主意書」という。)に対して、答弁書(内閣参質二一三第一一七号、以下「本件答弁書」という。)が送達された。
 
 本件質問主意書の質問一に対する本件答弁書の回答は、「業務の遂行に必要な人材を適切に確保しており、外国籍職員の国籍別人数が不適切であるとは考えていない」とされているが、個々の採用に焦点を当て、全体のバランスを考慮しないのは不適切と言わなくてはならない。特に、中国籍の職員が本件四法人(国立研究開発法人産業技術総合研究所、科学技術振興機構、物質・材料研究機構、理化学研究所)の外国籍職員の三割から半数を占めるのは、特定の国に対する依存を高めるとともに情報漏洩や技術流出のリスクを増大させ、国家安全保障及び経済安全保障上の問題が生じる懸念が十分にある。一国に偏った外国人職員採用は、この面においても適切と言えるものではない。
 
 また、本件答弁書によれば、「国立研究開発法人の機能強化に向けた取組について」において、関係府省から各国立研究開発法人に対し、職員の採用・受入時に申告された兼業や研究費受入等の外部機関との連携関係の情報について、定期的なフォローアップを行う取組を促すこととしたとのことである。この「研究セキュリティー」の確保に向けたフォローアップは適切な取組と思われ、今後、このフォローアップを的確に行い、結果については随時公表されることが重要である。
 
 本件質問主意書の質問二に対する本件答弁書の回答では、「外国の研究者や研究機関との共同研究や情報交換などの活動が含まれるため、特定の事業を明確に区分することが困難である」とされている。しかし、我が国の科学技術分野の国際的活動の全体像を把握して政策を策定するためには、各国との事業を明確に区分することが必要なことが明らかである。例えば、日本学術振興会は国際共同研究事業の申請・採用状況を公開しており、中国との共同研究プログラムの内容も紹介している。このように現に明確に区分できる事業が存在し、公表されている事実がある。
 
 本件質問主意書の質問四に関する本件答弁書の回答では、「中国の「千人計画」に関連する事業について回答することは、我が国の情報収集能力を明らかにするおそれがあるため差し控える」とされている。しかし、「千人計画」について、JSTはScience Portal Chinaにおいて事業内容を紹介している。また、大学のホームページや本人のブログなどで参加・関与を明かしている研究者も複数名確認されている。そのため、公開情報だけに基づいても「千人計画」に参加した者が研究開発法人の事業に関与しているかを把握することはおおよそ可能であり、技術データや個別分野における最新の知見、及び人材の野放図な国外流出を防ぐためにも適切な対応を取る必要がある。
 
 本件質問主意書の質問五に対する本件答弁書の回答では、「国立研究開発法人科学技術振興機構アジア・太平洋総合研究センターについて、同地域を対象に調査研究や情報の発信を行っている」とされているが、これは二〇二一年までに改編された内容についてのことである。二〇〇六年に設立された「中国総合研究センター」について、長期間にわたり中国のみを対象として事業を実施していた部分に関する答弁が欠落している。
 
 以上を踏まえ、以下質問する。
 
一 
特定の一国が外国籍職員中の三割から半数という高い割合を占めているにもかかわらず、不適切でないとする根拠はどこにあるのか。また、その根拠に基づいて、政府が全体のバランスをどのように評価しているかについて示されたい。特定の国に偏ることで、当該国に対して情報漏洩や技術流出のリスクが増大し、国家安全保障上及び経済安全保障上の問題が生じる懸念があると考えられるが、それをどう評価し、この面でのリスク管理にどのように取り組んでいくのか、現状と方針を明らかにされたい。
 
二 
フォローアップに関して、取組進展の成果取りまとめや公表時期について今後の具体的な予定を示されたい。今後、こうした取組により透明性を確保し、国民に対する説明責任を果たすことが重要であると考えるが、政府としての基本的姿勢を明らかにされたい。
 
三 
研究開発法人の諸事業において、明確に区分できる事業があることに鑑み、本件質問主意書の質問二に対する再度の回答を本質問主意書の前段での事実の指摘を踏まえて示されたい。また、本件質問主意書の質問三の「国防七校」に関する質問についても、再度具体的な回答を示されたい。
 
四 
本件質問主意書の質問四に対して公開情報にも基づき、具体的な答弁をされたい。本件答弁書によれば、政府は研究開発法人の成果について国外流出の防止に努めることとしているが、それぞれの研究開発法人において現在具体的にどのような措置を執っているかを明示されたい。
 
五 
二〇〇六年に「中国総合研究センター」を設置し、二〇二一年の組織改編に至るまで長年にわたり中国のみを対象とする組織を維持してきた経緯と理由を具体的に明らかにされたい。
 
 右質問する。

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