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2025.2.10

大学における外国人留学生の出身国の偏在と安全保障上の懸念に関する質問主意書

令和7年2月10日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
 
『大学における外国人留学生の出身国の偏在と安全保障上の懸念に関する質問主意書』

提出者 神谷宗幣

 私が第二百十六回国会に提出した「大学における外国人留学生の出身国の偏在と安全保障上の懸念に関する質問主意書」(第二百十六回国会質問第二三号、以下「本件質問主意書」という。)に対する答弁(内閣参質二一六第二三号、以下「本件答弁書」という。)を踏まえ、改めて質問する。

 本件質問主意書では、我が国の大学において外国人留学生の出身国が偏在しており、特に中国人留学生が突出して多い現状を示し、安全保障上の懸念について政府の見解を質問した。本件答弁書によれば、政府は外国人留学生の総数や出身国及び我が国の大学における在籍者の数に占める外国人留学生の比率を把握しており、当然、中国人留学生の数及び比率が突出して多いことも把握していると考える。

 独立行政法人日本学生支援機構が実施した「二〇二三(令和五)年度外国人留学生在籍状況調査結果」によると、二〇二三年五月一日現在、中国人留学生は全留学生の約四十一%(約十一・五万人)を占め、最多となっている。また、令和六年十一月一日現在、最先端の研究機関である東京大学における中国人留学生は、外国人留学生の約六十七・八%(全学生の十二%以上)を占めている。このように、明らかに外国人留学生の出身国が偏在している状況にもかかわらず、本件答弁書は「安全保障上の課題が多い中国からの留学生の増加」について明確に回答していない。現状を「外国人留学生の出身国が偏在している」と認めないのは、説得力を欠くのではないかと考える。

 一方、中国の「国防動員法」、「国家情報法」及び「軍民融合政策」について、本件答弁書は従来の答弁と変わらず、「他国の法律及び政策であり(中略)お答えすることは困難である」と述べるにとどまっている。

 しかし、令和六年版外交青書は、「中国は「軍民融合発展戦略」の下、(中略)軍の近代化を推進している」、「力による一方的な現状変更やその既成事実化の試み、地域の緊張を高める行動を継続・強化している」、「現在の中国の対外的な姿勢や軍事動向などは、日本と国際社会の深刻な懸念事項であり、(中略)法の支配に基づく国際秩序を強化する上で、これまでにない最大の戦略的な挑戦」と分析している。

 また、令和六年版防衛白書は、「中国は、過去三十年以上にわたり、透明性を欠いたまま、継続的に高い水準で国防費を増加させ、(中略)軍事力の質・量を広範かつ急速に強化している。」、「加えて、いわゆる軍民融合発展戦略を全面的に推進しつつ、軍事利用が可能な先端技術の開発・獲得にも積極的に取り組んでいる。」、「こうした中国の対外的な姿勢や軍事動向などは、わが国と国際社会の深刻な懸念事項であり、わが国の平和と安全や、国際社会の平和と安定を確保し、法の支配に基づく国際秩序を強化するうえで、これまでにない最大の戦略的な挑戦であり、わが国の防衛力を含む総合的な国力と同盟国・同志国などとの協力・連携により対応すべきものである」と分析している。

 外交青書と防衛白書が示すとおり、中国の法律や政策は我が国の安全保障に直接影響を及ぼすものである。それにもかかわらず、本件答弁書を含む政府の従来の答弁は、これを終始正面から取り上げることなく、無責任と言わざるを得ない。

 以上を踏まえ、以下質問する。

 本件答弁書では、「政府としては、多様な国及び地域からの外国人留学生の受入れは重要であると考えており、(中略)外国人留学生の受入れの促進に取り組んでいる」とある。

  1. 中国人留学生が全外国人留学生の約四十一%以上を占める現状は、「多様な国及び地域からの外国人留学生の受入れ」との方針に合致すると考えるのか。若しくは、この状況を偏りがあると認識しているのか政府の見解を示されたい。
  2. 東京大学では、中国人留学生が外国人留学生の約六十七・八%、すなわち三人に二人以上を占め、全学生に対しても十人に一人以上、大学院等では五人に一人以上となっている。このような状況が「多様な国及び地域からの外国人留学生の受入れ」との方針に合致すると考えるのか。外国人留学生の出身国に著しい偏りがあるのではないかと考えるが政府の見解を示されたい。
  3. 前記1及び2について、偏りがないとの見解であれば、その理由を具体的に示されたい。

 政府は従来、「中国の軍民融合政策は日本の安全保障に影響を及ぼす」旨の認識を示しており、外交青書や防衛白書でも同様の立場を取っている。他方で、大学における中国人留学生の突出した増加については、具体的なリスク分析を示していない。中国の軍民融合政策を深刻な懸念事項と捉えている一方で、大学における中国人留学生の増加について問題視しない理由を示されたい。また、大学における中国人留学生の増加が日本の安全保障に与えるリスクを具体的にどのように評価しているのか政府の見解を示されたい。

 本件答弁書によれば、政府は「安全保障貿易に係る機微技術管理ガイダンス(大学・研究機関用)」を周知する等のための文書を発出し、本ガイダンスに沿って指導等を行っているとするが、各大学で実際にどのような対策が講じられ、具体的にどのような成果が上がっているのか示されたい。また、過去三年間における法令違反・指導の件数及びその内容を示されたい。さらに、政府として、本ガイダンスの実施状況をどのように検証し、どのような改善を行ったのか、具体的な事例を挙げて説明されたい。

 令和六年六月四日の参議院文教科学委員会において、盛山文部科学大臣(当時)は「少子化の急速な進展、そしてそのほかのいろいろな状況があろうかと思いますが、定員未充足の大学が増加している、あるいはそういったことを理由にして経営悪化傾向のある大学があるということで、我々としましても、文部科学省としてもきめ細かな指導、助言、これを必要に応じて実施してきたところでございます」と答弁した。

 定員未充足により経営悪化傾向にある大学が外国人留学生を受け入れることで経営改善を図ろうとするケースが考えられる。このような状況について、政府はどのように分析・評価しているのか示されたい。また、このような理由による外国人留学生の受入れについて、どのような指導や助言を行っているのか示されたい。

 右質問する。

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