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2025.3.18

外免切替制度の懸念と国際免許の制度的抜け穴に関する質問主意書

令和7年3月18日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
 
『外免切替制度の懸念と国際免許の制度的抜け穴に関する質問主意書』

提出者 吉川里奈

 一九四九年に採択された道路交通に関する条約(以下、「ジュネーブ条約」という。)は、締約国において国際運転免許証を所持する者の運転を認めている。日本の運転免許証保持者は、この制度に基づき国際運転免許証を取得し、条約締約国で運転することが可能である。

 しかし近年、ジュネーブ条約に加盟していない国の免許保持者が日本で運転免許証を取得し、国際運転免許証を申請するケースが増加している。こうした取得者は、日本の運転免許証を基にジュネーブ条約加盟国百一カ国で運転することが可能となる。

 この背景には、外国で取得した運転免許証を日本の運転免許証に切り替える制度(以下、「外免切替」という。)がある。二〇二三年の外国籍の者による外免切替件数は五万六千二十二件(前年比二十八%増)、外国人に対する国際運転免許証の交付件数は二万千四百十六件(前年比三十三%増)と、いずれも増加している。

 こうした状況の中、外免切替を目的とした観光ツアーが登場し、日本の運転免許試験場には長蛇の列ができるなど、現場の混乱が報じられている。以上のような状況から、日本の運転免許証がジュネーブ条約未締約国の免許保持者にとって「抜け穴」として悪用されている懸念が強まっていると考える。

 国際道路交通事故データベースによれば、日本の道路交通事故死亡率は十万人当たり二・六人と、世界的にも低水準である。これは、日本の免許取得者の大半が、教習所での徹底教育と厳格な試験を経て免許を取得しており、これが交通事故死亡率の低さに寄与していると考えられる。

 こうした背景から、日本の運転免許制度は厳格な基準を持つものとして国際的に信頼を得ており、ドイツやフランスなどでは、日本の免許を現地免許に切り替えやすい制度も設けられている。

 しかし、外免切替では、日本人が受ける教育プロセスが省略されている。知識試験は十問の○×式問題のみで、七問以上正解すれば合格となる。日本人向けの百問試験とは大きく異なり、内容も基礎的なものに限られる。技能試験もS字走行、クランク、千二百メートル走行、一時停止及び交差点通行のみで、公道での試験は実施されない。知識試験と合わせても一日で完了する仕組みとなっている。

 こうした基準の違いが影響しているのか、外国人ドライバーの交通事故率は全国平均の一・八倍に達している。本年二月二日の朝日新聞によると、公益財団法人交通事故総合分析センターの調査では、短期滞在の訪日外国人によるレンタカー事故が増加しており、二〇二三年には全国で五十七件発生した。また、その約八割が沖縄県と北海道に集中し、いわゆる右直事故や出会い頭事故が目立つという。原因として、日本語表記の理解不足や通行ルールの違い、日本の交通文化への不慣れが挙げられている。このような状況が、外国人ドライバーによる事故増加の一因となっており、この問題が放置されれば、日本の運転免許制度の信頼性にも影響を及ぼしかねないと考える。

 以上を踏まえ、質問する。

 
外免切替について

  1. 直近の年度における外国籍の者による外免切替の申請件数及び国籍別の件数を、それぞれ可能な限り示されたい。
  2. 外国人に対する国際運転免許証の交付件数及び国籍別の件数を、それぞれ可能な限り示されたい。
  3. 1及び2について、十年前と比較し、どの程度増加したのか増加率を明らかにされたい。

 
私が過去に提出した質問に対する答弁書(内閣衆質二一六第二八号)において、政府は、外免切替について、「当該国又は地域の運転免許制度等が我が国と同等の水準にあると認められる国又は地域以外の運転免許を有する者については、原則として、自動車等の運転について、質問による必要な知識の確認及び実技をさせることによる技能の確認を行っている」と答弁した。他方、本年二月四日の衆議院予算委員会において、坂井学国家公安委員長は、外免切替の学科試験について「私が見ても簡易な、安易なもの」と答弁し、同年三月三日の同委員会では、外免切替について課題があることを認め、今後、海外の外免切替に類似した制度の調査結果を踏まえ、制度と運用の両面から検討を進めることを明らかにした。

  1. 政府が認識している外免切替の課題は何か。
  2. 今後、外免切替をどのような観点から見直すのか

 
外国人ドライバーの事故が特定地域に集中し、地域住民の不安を招いている現状について

  1. 政府はどのように認識しているのか。
  2. 単なる啓発活動ではなく、事故の発生を抑制するための具体的な規制措置や制度改正が必要と考えるが、検討しているか。

 
前述のとおり、現状の制度では、日本発行の国際運転免許証を所持する外国人による交通事故や違反の増加が懸念される。日本の国際運転免許証の信頼が損なわれるだけでなく、各国が受入条件を厳格化する可能性も否定できないと考える。政府は、このような日本の運転免許制度の運用が日本発行の国際運転免許証の受入条件や国際的な信頼に与える影響についてどのように認識し、対応の必要性についてどのように検討しているのか、具体的に示されたい。

 
日本はジュネーブ条約締結国として、国際免許の適正な運用を担保する責任を負う立場にあると考えるが、政府の認識を示されたい。

右質問する。

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