令和7年3月25日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
『デジタル・ポジティブ・アクションに関する質問主意書』
提出者 神谷宗幣
政府は、インターネットやSNS利用者のICTリテラシー向上を目的として、プラットフォーム事業者、通信事業者、IT関連企業、関連団体と連携し、「DIGITAL POSITIVE ACTION」(以下「本件アクション」という。)を開始した。SNSを含む情報通信メディアの利用者が、偽情報や誤情報、フェイク動画、詐欺広告などを見分ける力を養うとともに、誹謗中傷や個人情報の流出等を防ぐことは、今日の重要な課題である。
実際に、SNS上では誤情報やフェイク動画等が拡散され、不当な誹謗中傷が繰り返される例も見受けられる。また、新聞、雑誌、テレビ等の既存メディアにおいても、誤情報が発信され、世論形成に影響を及ぼすことがある。例えば、いわゆる慰安婦に関する誤った新聞報道は、訂正までに長期間を要し、その間に誤った歴史認識が広まり、日本の名誉が損なわれた。このような事例を踏まえ、情報発信者はその影響力と責任を強く認識し、正確で公正な報道を徹底すべきである。
一方、誤情報等への対策という名目で、プラットフォーム事業者による削除措置が恣意的に運用される懸念がある。政府は、いわゆる情報流通プラットフォーム対処法(特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律)の施行に伴い、二〇二五年三月十一日、違法・権利侵害情報の削除に関するガイドライン(「特定電気通信による情報の流出によって発生する権利侵害等への対処に関する法律における大規模特定電気通信役務提供者の義務に関するガイドライン」。以下「本ガイドライン」という。)を定めた。しかし、本ガイドラインでは、削除基準の透明性や適正な異議申立手続が不十分と指摘されている。現状では、削除するか否かの判断が事業者の裁量に委ねられているため、言論の自由が制約される懸念や誹謗中傷の被害が止まらないおそれがある。政府は本ガイドラインの運用状況を検証し、削除基準の透明性向上や異議申立手続の整備を進めるべきである。
誤情報等への対策は、「報道の自由」や「言論の自由」の確保が前提である。規制や操作により情報が偏向し、発信者が自由な発信を控える事態を招いてはならない。特に、削除基準が不透明だと自己検閲を助長し、自由な議論が制約されるおそれがある。また、誤情報等が疑われる場合には、迅速に反対意見の表明や健全な批判がなされ、幅広い見解や議論を通じて利用者がその真偽を判断できる環境を整える必要がある。
この点、SNS上では多様な意見や見解が発信される一方で、既存メディアでは取り上げる情報が限られる傾向がある。また、「報道しない自由」に基づく意図的な情報の取捨選択が、偏向報道や印象操作につながる危険性も指摘されている。こうした状況を防ぐためには、既存メディアの透明性を確保することが必要である。これは「報道の自由」や「言論の自由」とともに、国民の「知る権利」を守るために不可欠である。
本件アクションにはTikTok Japanも参加しているが、TikTokは中国企業が運営しているSNSであり、米国などで情報漏洩や情報操作の懸念が指摘されている。このため、参加企業の選定基準やリスク管理が問われる。また、中国国際電視台によれば、二〇二四年十二月に開催された「第二回日中ハイレベル人的・文化交流対話」において、「メディアやシンクタンクの交流と協力を強化し、(中略)世論環境の改善に注力する」との共通認識(以下「日中間の共通認識」という。)が示されたという。一方、政府の見解によれば、同対話において日中間で合意文書は作成されておらず、双方が独自に発表を行ったため、発表内容に差異があるとしている。しかし、日本側は同対話の詳細を公表しておらず、発表内容の違いや経緯が不透明である。そのため、本件アクションの背景について憶測が広がり、SNS上では日中の密約に基づくとの懸念も指摘されている。
本件アクションと日中間の共通認識の関連について、政府の明確な説明が求められる。情報発信の自由と国民の知る権利は不可分であり、政府が国民に対して適切な説明を行わなければ、情報統制の疑念を招くおそれがある。特に、本件アクションの背景や目的が不透明なままでは、国民がその意義を正しく理解し、判断することは困難であるため、政府は透明性を確保し、詳細な情報公開に努めるべきである。特に、参加企業の選定基準やガバナンスについて、国民に具体的な説明を行う必要がある。
以上を踏まえて質問する。
一
本件アクションの目的と今後の具体的な進め方について、政府はどのように報告や評価を行うのか示されたい。また、発表の時期や形式を明らかにされたい。
二
SNSは、国民の情報収集や言論活動において重要な役割を担っている。本件アクションにより、政府はSNS運営にどのように関与するのか。また、政府の関与が過度な規制や言論統制につながらないよう、どのような仕組みを講ずるのか示されたい。
三
本件アクションの議論や施策について、政府はどのように国民に情報共有を行うのか示されたい。
四
本件アクションにはTikTok Japanが参加しているが、情報操作や情報漏洩のリスクについて、政府はどのように評価しているのか。また、第二回日中ハイレベル人的・文化交流対話において、中国側が発表した「メディアやシンクタンクの交流と協力」の方針と本件アクションは無関係であるのか示されたい。
五
プラットフォーム事業者の削除措置について、本ガイドラインでは削除基準の透明性が十分に確保されていないとの指摘がある。政府は、削除基準の恣意的な運用を防ぐために、本ガイドラインの運用状況をどのように検証するのか示されたい。
六
既存メディアの「報道しない自由」により、特定の情報が意図的に取捨選択されることが偏向報道や印象操作につながるとの指摘がある。政府は、メディアにおける情報の透明性をどのように確保するのか示されたい。
七
本件アクションに参加する企業の選定基準やガバナンスの方針について、政府はどのように決定しているのか示されたい。また、参加企業に対して情報の扱いや運営方針についてどのような責任を求めるのか示されたい。
右質問する。