サイバー対処能力強化法案及び同整備法案への反対理由
政府は「サイバー対処能力強化法案」を第217回国会に提出し、「能動的サイバー防御」の実現に向けた取り組みを進めています。本法案は、サイバー攻撃を未然に防ぎ、国家の安全保障を強化する上で重要な一歩です。従って、本法案の必要性、方向性、目的には賛同します。
しかしながら、「サイバー安全保障分野における対応能力を欧米主要国と同等以上に引き上げる」という目標を達成するには、現行の法案にまだ不十分な点が多く残されており、より実効性のある修正・補強がなされた法案が必要であると判断し、参政党は衆議院において反対の立場を取ることといたしました。
参政党が具体的な課題と捉えている点は、以下のとおりです。
- サイバー領域での急速な状況変化への対応力不足:サイバー領域では、平時が続いているように見えても、突然有事に変わる可能性があります。特に発電所や水道、交通などのインフラ・システムが攻撃された場合、平時と有事の判断基準や切り替えのプロセスを事前に定めておかなければ、有事の際に致命的な被害を招くリスクがあります。
- 外国への支援要請に関する事前の想定が不十分:例えば、北朝鮮からの攻撃で重要施設が危機に陥った際、中国やロシアなどに協力を求める必要が生じるかもしれません。しかし、その際に日本の重要情報をどの程度提供するか等、難しい戦略的判断が求められるケースが想定されていません。こうした対応を有事になってから検討していては間に合わず、結果として国益を守ることができません。
- 対抗措置への承認を行う独立機関の人選基準が不明確:サイバー攻撃に対し、無害化措置等を承認する「サイバー通信情報監理委員会」の構成員について、法令の適法性を確認する能力だけでなく、サイバー分野の戦略的視点を持つ人材が必要です。しかし、現行の法案ではその基準が示されていません。そのような人選がなされなければ、当該機関の実効性が損なわれる懸念があります。
- スパイ行為への対処等、人的脅威に関する法整備が不十分:本法案は主にシステム面への対策に特化しており、悪意を持つ人物によるスパイ行為や内部からの脅威への対策が十分ではありません。これらの人的脅威への対応も強化する必要があります。
ただし、昨今の情勢を踏まえると、サイバー対処能力の強化は喫緊の課題です。早急上記の点が修正・補強され、国益を十分に守る内容となれば、参議院での賛否を再検討する方針です。
<参考:内閣官房ホームページ掲載資料>
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/cyber_anzen_hosyo_torikumi/pdf/setsumei.pdf