令和7年1月24日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
『土地利用状況に関する報告を踏まえた安全保障と外国人土地取得規制に関する質問主意書』
提出者 神谷宗幣
令和六年十二月二十三日に開催された第十回土地等利用状況審議会における報告事項「重要施設周辺等における土地等の取得の状況(令和五年度)について」(以下「本件報告」という。)によると、国境離島や重要施設周辺等での外国人・外国系法人による土地・建物等の取得が顕著である。令和五年度までに指定された注視区域(三百九十九区域)内において、同年度中、外国人・外国系法人が土地百七十四筆、建物百九十七個を取得しており、国別では、中国が二百三筆個と全体の五十四・七%を占めている。該当事例に係る注視区域の多くは自衛隊関連の施設(基地、駐屯地、弾薬庫など)であることから、安全保障に重大な影響を及ぼす潜在的なリスクを我が国は抱えている。
特に、令和六年版外交青書によると、中国は「力による一方的な現状変更やその既成事実化」を試みており、この行動は「法の支配に基づく国際秩序を強化する上で、これまでにない最大の戦略的な挑戦」であるとしている。この状況の中で、中国が重要施設周辺等において多くの土地・建物等を取得している現状は、我が国の安全保障において注視すべき課題である。一方で、令和五年度に、「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」(以下「同法」という。)第九条に基づく、重要施設等の機能を阻害するような土地等の利用の中止等を求める勧告及び命令が一度も行われなかったことは、法的措置が実際の脅威に対して不十分であることを示している。我が国の安全保障のため、同法の遅滞ない厳格な適用が必要である。
さらに、本件報告で明らかとなった深刻な状況は、現行法だけでは安全保障上の必要な対応を効果的に行うことが難しいことを示唆していると考える。このため、GATSの条約改正を含む国際的な枠組みを通じて外国人による土地等の取得をより厳しく制限する措置を検討することや、土地等の取得に関する調査権限を強化することも重要だと考える。
以上を踏まえ質問する。
一
同法第五条では、注視区域は重要施設の敷地の周囲おおむね千メートルの区域内と定められているが、機能阻害行為は千メートル以上離れた場所からでも可能であると考えられる。千メートルとした根拠を明らかにするとともに、この範囲を広げる必要性について政府の見解を示されたい。
二
「重要施設の施設機能及び国境離島等の離島機能を阻害する土地等の利用の防止に関する基本方針」(令和四年九月十六日閣議決定。以下「基本方針」という。)において、「機能阻害行為の類型並びに勧告及び命令の対象となり得る行為」について記されている。機能阻害行為の範囲が狭いのではないかと思われるが、この範囲についてはどのような基準で決定されたか示されたい。
また、基本方針では「施設の敷地内を見ることが可能な住宅への居住」は機能阻害行為に当たらないとしているが、このような住宅から施設の敷地内の動向が監視可能であることは、安全保障上の懸念を生じさせるものではないのか。この点について政府の見解を示されたい。
三
基本方針によれば、「注視区域内にある土地等の利用者が、現に、当該土地等を機能阻害行為の用に供していると認められる場合」のみならず、「注視区域内にある土地等の利用者が、当該土地等を機能阻害行為の用に供する蓋然性が社会通念上相当程度高いと認められる場合」にも、勧告の対象になるとされている。この「蓋然性」を適切に判断し、同法を厳格に適用するためには、調査機能を強化する必要があると考えるが政府の見解を示されたい。
また、同法に規定される利用者等関係情報の提供(第七条)及び報告の徴収等(第八条)に基づく現在の体制が、実際に現状の脅威を把握し、適切に対応するために十分であると考えるか政府の見解を示されたい。
さらに、これらの措置に加えて、我が国の安全保障を確実に保つための追加的な手段の導入が必要と考えるが政府の見解を示されたい。
四
同法は、「注視区域の指定(第五条)、土地等利用状況調査(第六条)、利用者等関係情報の提供(第七条)、報告の徴収等(第八条)、注視区域内にある土地等の利用者に対する勧告及び命令(第九条)、土地等に関する権利の買入れ(第十一条)」と段階を追った措置を規定している。土地等利用の状況調査を実施し、機能阻害行為が確認された(あるいはそのおそれがある)段階で、勧告及び命令等による利用規制などに進むことが見込まれていると思われる。調査から勧告、勧告から命令に至るまで、それぞれどれくらいの期間を要すると想定しているか示されたい。
五
機能阻害行為の用に供されることを防止するため、国が適切な管理を行う必要があると認められるものについては、同法に基づき当該土地等の買入れを行うとされている。外国人・外国系法人による土地等の取得そのものを規制する体制が整っていない現在の体制を補完する意味でも、機能阻害行為の蓋然性が高い場合には、国による買入れを積極的に進めるべきと考えるが政府の見解を示されたい。
六
中国の「国防動員法」及び「国家情報法」を考慮すれば、土地等を取得した中国人・中国系法人が、これらの法律に従い中国政府の指示に基づく機能阻害行為を行う可能性を否定できない。このような状況は、我が国の安全保障にとって明白な脅威であると考える。この点を踏まえ、外国資本による土地取得に対し、追加的な対策を講ずる必要があると考えるが政府の見解を示されたい。
七
登記上は日本人・日本法人名義であっても、実際には外国人・外国系法人が出資して土地等を取得しているケースが存在する可能性がある。我が国の安全保障を確保するためには、このようなケースを効果的に把握し、適切に対応する体制を整備することが重要である。現在、このような状況を調査する体制は採られているか。また、本件報告には前記ケースは含まれているか示されたい。
八
本件報告では、我が国の安全保障に重大な影響を及ぼす潜在的なリスクが明らかになっている。特に、外国人・外国系法人による我が国の土地等の取得に対して、より厳格な規制を行う必要があると考える。土地等の取得そのものの規制、使用目的の規制、税制上の措置など、様々な方策が考えられる。本件報告を踏まえ、規制強化の方向で同法の改正を検討すべきと考えるが政府の見解を示されたい。
右質問する。