令和7年1月24日付で下記の通り質問主意書を提出しました。
政府からの答弁があった際には、こちらに掲載いたします。
『LGBT理解増進法等の急進的推進による社会的影響への懸念に関する質問主意書』
提出者 神谷宗幣
LGBT当事者からの懸念を含む様々な議論が交錯する中で、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」(以下「LGBT理解増進法」という。)が二〇二三年六月二十三日に公布され、施行された。
性的指向は、公共の福祉に反しない限り、個人の自由として尊重されるべきであり、その是非を他人が判断することは適切ではない。LGBT理解増進法は、国や地方自治体、事業主、学校設置者に対して理解増進のための具体的な施策の策定や教育の推進、相談体制の整備などを求めている。この法律により、性的指向やジェンダーアイデンティティに関する専門家や活動家が社会の様々な場面で積極的に活動し、その理念を浸透させる基盤が整えられた。
性的指向やジェンダーアイデンティティに関する議論は、哲学や社会学、フェミニズム理論、さらには批判理論など多様な学問分野から発展してきたものであるが、一部ではその思想がマルクス主義や批判的人種理論に影響を受けていると指摘される。これらの議論は、時に過激な運動の根拠となり得るため、慎重なアプローチが必要である。
実際に、急進的な施策が社会の分断や対立を深刻化させた事例は世界各地で見られる。例えば、二〇一六年、米国のあるLGBT団体が受け取った公費の一部が政府政策に反対する過激な抗議活動に使用されたとして、一部が暴徒化し、法的問題に発展した。二〇一九年には、カナダ・オンタリオ州で、学校のジェンダー教育に対する抗議が暴力事件にエスカレートし、警察が複数名を拘束する事態となった。さらに、二〇二一年には米国バージニア州ラウドン郡で批判的人種理論の教育課程導入を巡る保護者同士の対立が暴力沙汰となり警察が介入した。同年、オランダ・アムステルダムのイベントにおいて反対派が暴力を振るい警察が介入し、一方でプライド運動を支援する活動家の発言が更なる対立を誘発する事態となった。
これらの事例からも、諸外国では、国民から十分な理解を得られていない急進的政策が社会の分断を引き起こしていることは明らかである。これらの政策に影響を及ぼしたとみられる批判的人種理論は、特に教育現場や職場における「構造的差別」を再定義し、それに基づく改革を促す理論として知られているが、保守派からは「逆差別」を助長し、若者への過剰な思想教育につながると強く批判されている。LGBTに関する政策に対しても、保守派の間では一部の活動が従来の家庭観や宗教的価値観を侵害する可能性があると主張されており、これらの批判はしばしば法廷闘争の場でも展開されている。
このような背景から、日本においても急進的な思想や政策が過激な運動の理論的基盤として利用される危険性が指摘されている。その結果、この急進的な思想が公共政策に影響を及ぼし、公費が特定のイデオロギーの拡大に利用される可能性について、慎重な分析と議論が必要である。この点を踏まえれば、「LGBT理解増進法」が掲げる「理解の増進に関する施策」が、特定の価値観の押し付けや社会の分断を招いたり、施策の実施が目的を逸脱したりしないように社会全体で監視と議論を続けることが強く求められている。
前記を踏まえて、質問する。
一
性的指向やジェンダーアイデンティティに関する施策が、特定のイデオロギーや価値観の押し付けにつながらないよう、政府はどのように施策の透明性を確保し、国民への説明責任を果たすのか示されたい。
二
性的指向やジェンダーアイデンティティに関する教育が、批判理論や特定の思想に偏らず、中立性を保ちながら進められるよう、どのような指針や監督体制が設けられているのか示されたい。
三
公費が極端な思想の支援や特定の活動家による利用に流用されることを防ぐため、政府はどのような監視体制や防止策を設けているのか示されたい。
四
性的指向やジェンダーアイデンティティに関する施策の実施に際して、その過激化を懸念する国民の意見をどのように取りまとめ、どのように施策に反映していくのか示されたい。
五
性的指向やジェンダーアイデンティティに関する施策が過激なイデオロギーの拡散に利用されることを防ぐため、政府はどのような視点で対策を講じ、社会の安定を維持していくのか示されたい。
右質問する。